シグルイ 山口貴由 [原作]南條範夫リンク補修
「素浪人月影兵庫」で有名な(? 南條範夫の
時代小説「駿河城御前試合」の一節を原作とした残酷無惨時代劇漫画。
実は絵柄とグロ表現が受け付けられず、ずっとスルーしてきたんだが
この度めでたく完結したので、意を決して通し読みすることにしたら
噂に違わぬ名作だった。
生まれの不遇と異常な信念をもつ二人の剣士の7年にわたる因縁の対決
不器用なまでに士の在り方を体現する藤木源之助と
野心家で天才、世事にも長ける伊良子清玄
他人を利用し虐げる清玄を徹底的に悪人に仕上げ、
反面、実直すぎる忠義がため孤立する源之助を
延々と不遇の主人公然と見せながら、
その実、清玄には虎眼流に復讐するもっともな理由があり
士のプライドを最期まで守り抜いたことをラストで明かす展開は秀逸。
作品冒頭と同じ対戦描写をラストでもう一度描き直しているが
冒頭は客観的な視点、ラストはふたりの主観的視点で描かれており
見比べてもまた面白いものがある。
ラストの清玄の無明逆流れの構えが、
冒頭の"それ"ほど奇怪に描かれていないという意見があるようだが
それこそ客観視点で見た異質さと、これまでの経緯あっての
主観の違いと言えるだろう。
それにしても
短編小説をここまで奥深く広げるとは「母をたずねて三千里」もびっくりだ。
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posted by Gamma at 06:08|
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山口貴由